vol.738 まんだらけ創世記の仕入れ話
2026-01-19
・いくとさんからのお便り②
・頑固な店主とのやり取り
・手塚治虫買取エピソード
・クズ本が高値に
・ぎゅうぎゅうの車内
・貸本の山
本日の動画の内容
1.金がなく 夢だけがあった頃
まんだらけ創成期 資金も余裕もなく車で寝泊まりしながら各地を回っていた時代
手塚治虫作品は高嶺の花で 扱うことすらできなかった
2.漢詩がつないだ一冊
貸本屋の頑固な店主との交渉は値段ではなく 「漢詩」 という共通の趣味によって動いた 理解されることが信頼を生み 最初の手塚治虫本が手に入った
3. 当時はクズ いまは宝
かつては安価で見向きもされなかった貸本の山 その多くは処分され 捨てられた
いま振り返れば残していれば大きな価値になっていたものばかりだった
4.本と人が詰まったライトエース
ライトエースに人と本を限界まで詰め込み 必要なものだけを選び 不要な本は 国道脇に捨てた
無茶で荒っぽいが 必死だった時代の現実がそこにある
で 前回からの続きですね
いくとさんのお便りの続きですけども
えーっとまんだらけのごく初期の頃にですね
こう買い取りにこう色々行くわけですよ、車に乗って寝泊まりして
えーっと私と渡辺君とか酒井君とかね、いたんですよ当時は
で手塚治虫って扱えなかったんですよ、お金がないから
神田の中野書店っていうのはお金があるから手塚治虫専門店みたいになっててすごい儲けてたんです
羨ましくてこうしてたわけだけども
で買い出しに行ったらその貸本に手塚治虫のB6があったわけ
で、それゾッキ本だったんだけども、売ってくれませんかっつったら売れないよって
いやもう遠くから来たんで何とかお願いしますってずっと粘ってたんだよね
そしたらなんか話してるうちにわしは漢詩が趣味なんだ、趣味なんじゃとか言い出して
まあちょっと打ち解けてきたんだよね
でわしの好きな漢詩はうんたらかんたらうんたらって言ったんだよね
まあこれは誰も分からんだろうがなっつったんだけど
古川君はさらさらっと言っちゃった
こういう意味です良いですよね、それ私も好きですとか言ったんだよね
そしたらなんか店主の姿勢が変わって
ん?という感じで、おお分かるかとか言って
それでこう喋ってるうちに、じゃあまあいいか持ってって良いよって
じゃあ 5000円で良いですかって、古川君もケチだからね、言ったら
うん? それは安いじゃろうとか
いっぱい来てるらしいのやっぱマニアが、売ってくれ売ってくれって
だから相場はなんか知っちゃってんだよこの親父は
で交渉、じゃあ 6000円、7000円って言ってて、じゃあ1万円なら良いですかね遠くから来てんでとか言ったら
んまあ良いかっつう感じで売ってくれた
それが一番最初の手塚治虫が入ってきた
入荷した最初のもんだね
でも本当は今から思うとその、それは本当に大したもんじゃないんですよ、はっきり言って
あの大したもんじゃないというか、あの他のに比べたら
実は他にあのいっぱいあったの貸本
あの当時は本当にクズ本っていう、僕らは言ってたんだけどね
クズの貸本いっぱい
今はだって一冊 多分ね
今思い出し見ても数万のものがゴロゴロあったんだよ
当時は本当に一冊500円、2〜300円のがいっぱいあったの
今それ全部持ってきたら億万長者だね 本当に
億万はいかないけどもでも100万は軽く行っちゃうよね
そういうのをね 捨てたんだよ
あのね 全部持ってったら
そこは違ったよ? そこは違うけど
九州とか行ったときには、全部持っていってくれるんだったら売っても良いっつうやつがいて、人がいて
で、しょうがないからもう車にいっぱい詰めて
でねそのときはね 4〜5人で行ったんだ
あのねライト、ライト、何つったっけ箱型のトヨタのね、あの、ライトエースだライトエース、ライトエースを持ってたからグリーンのライトエースに
それはねもうパンパンに詰めてもう人の人乗るとこなんか無いよ
あのよくあるじゃん、あのYouTubeなんかでこの車に何人乗れるますかつって、2〜30人乗るやつあるじゃないですか、この小さなバンに。あんな感じだよ。
{*古川くんの正確な記憶をたどりますと車内は本当に満杯で実際は、 郊外の国道まで
1~2人は、車の外を走っていたようです(車はゆっくり走りましたが・・)}
まず本。本、床に積んで。そこに人間が寝て、そこにまた本入れるわけですよ。
で間にまた人間入れて
タイヤのこうもっこりしたとこ、間にまた人間入れて、その上に本積めて
やったらやっと
それで助手席もパンパンだ 助手席なんか人間
だからね 外から見たらもう全部本
で運転席もこんな感じよ
でギアが動かせるだけ あの、マニュアルだからね
それだけの あー
であとあの何
4人ぐらいいたんだよね、4人乗って、全部本積んで
で、えー
ちょっとあの街から出たらもう郊外になるからね
ちょっとあの出て、見えなくなった頃に止めて、あの後ろのハッチ開けたらだーっと出て、落ちてきたのね
でそこにいらない本全部捨てて、で要る本だけ残して、で去っていったわけ。
だから 貸本の山ができたよ、そこに国道の脇に。
そういう話書いたよ、どっか本にね
えーっとまんだらけ風雲録か。あれに書いたよね 確かね。
えーっと 太田出版から出したんだけどね
もう絶版だけど
あれも多分将来価値出るだろうね
んー 気になる人は買っといたら?
そういう話もあったよね
だから昔は面白い話いっぱいあるよ、そういうので
あーもう時間がきたね
じゃあ今日はここまで
あとがき
面白いのは残ったものより捨てられたもののほうがあとになって価値を持つ場合があるということだ
価値は保存された瞬間に生まれるだけではなく
「失われた」という事実によっても輪郭を持つ
だからこの話は儲け損ねた昔話でも武勇伝でもない
選別し続けた時間そのものがまんだらけという場所の見えない基礎になっている
そしてたぶん今われわれが何気なく手放しているものも
未来では誰かの「惜しまれる一冊」 になっている
価値は人の思いが作り出すのだ